五欲の狐 Fox of five desires "wealth love fame sleep and food"

昔 村で一番高い神聖な山に  狐が住んでいました。賢い狐は 聖なる息吹きの中 で 修行を積んで 化生する術を 獲得しました。村人に 好かれようと思い 不満を口にする村人を見ると、術を使って不満を解消してやりました。それで  村人は喜び 狐を神と崇め 神饌を供え 安全な住処を与えてくれました。しかし 不満を解消してやると 村人は 更なる不満を言い出すのです。人間と言う動物は 際限のない欲望を 持つと解ると 人間の欲望を 研究し 人間を 欲望地獄から救ってやろうとし、遂に 人間の五欲を 司れるまでになったのです。これで 狐は 村人から更に 崇められると思いましたが、以外にも 不評を買ったのです。しかも 欲望地獄から救ってやっても、直ぐに 人間は 新たな 欲望地獄に向うのです。そんな時 この山に寺が 建てられ その寺が栄え10棟以上の庫裏が 甍を並べるようになり 100人を超す僧侶や稚児が 住むようになりました。こうなると村人は 寺を崇め お布施をし 化粧狐を振り向く者は 無くなりました。狐は 不覚にも 寺の繁栄に嫉妬したのです。始め稚児達を騙して 憂さを 晴らしていましたが、稚児の修行が進むと 狐の業を破り 痛い目に 遭わすようになりまし。楽しみが 苦痛に変ると 狐は「まだ修業が進んでいない稚児を堕落させて 修業を進まないようにし、寺を寂れさせよう 」と 思い立ちました。新入りの稚児が 入山すると、早速 五欲の虜にして 堕落させました。堕落させられた 小坊主は 成人して 僧侶になっても 五欲を 求める様になり 寺の風紀が乱れ 寺は 村人から崇められなくなったのです。困り果てた 住職は 一心不乱に仏に向かい、毎日毎日 食断ちし 読経しました。29日が 過ぎ 痩せ衰え 死を覚悟した頃に 和尚の頭は澄み渡り 目前に光が放たれました。目を閉じ 雑念を払い続けていると、光は 瞼を通り抜け 黄金に輝く光りの中に えも知れない 見目麗しい女性が 現れ「私は弁才天です 私を 祀りなさい  あの化生狐から 必ずあなたを お救い致します」と 言うのです。和尚は 早速 蓮池と言う弁天池を 掘り 弁財天を祀り、頭の中を 弁財天で 満たして 悪化生狐を 退治しに 住処を探しに 行きました。狐は「わしの術は 和尚の法力を超えた」と 確信していたので、住職と 法力争いになりました。狐は あらゆる手段を使って 住職を悩ませますが、弁財天の加護を 信ずる住職は、狐の業には 見向きもせず、読経を 続けたのです。そして穏やかに「狐殿  それだけの業を 磨くのには さぞ 厳しい修業をしたであろうに、何故 私の様な弱い人間に 嫉妬するのか」と 尋ねました。狐は 人間の五欲を 操れるのに 自分の五欲を律する事が出来なかったことに気 付き 住職に 降参したのです。住職は 狐を 弁財天の眷属にし、人間の嫉妬の心を 和らげるよう働かせました。 五欲:食欲 財欲 色欲 名誉欲  睡眠欲の総称五欲 - Wikipedia」「五欲(ごよく)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp) 食欲:食べたい、飲みたいと言う欲 財欲:お金が欲しい、物が欲しいと言う欲 色欲:異性等 性の喜びを求める欲 名誉欲:褒められたい、認められたい、嫌われたくないという欲 睡眠欲:寝ていたい、楽したいという欲 稚児:真言宗や天台宗等の大規模寺院の剃髪しない少年修行僧(12~18歳)を 稚児と呼びます  皇族や上位貴族の子弟が 行儀見習い等で寺に 預けられる「上稚児」、頭の良さを認められた僧侶の世話係「中稚児」、芸道等の才能が見込まれて 雇われたり悪徳僧侶に 人身売買売された「下稚児」が ありました  禅宗では 喝食kassikiと呼ばれました。  真言宗 天台宗等の大寺院の修行場は 山間部にあり、女人禁制でした  そのため 上稚児を除き 稚児は 男性社会での女性的な存在となりました  中世以降の禅林(禅宗寺院)でも 稚児や喝食は 恋愛の対象となりましたhttp://newsnoma.blog.fc2.com/blog-entry-1182.html?sp」 弁財天 弁天 妙音天 美音天 大弁才天:仏教における智慧Tie 弁舌 技芸の女神  もとはヒンドゥー教の神で「水を有するもの」を意味する女性名です  金光明最勝王経Konkoumyou-Saisyou-ou-kyoでは 弁才天はこの経を説く人や 聞く人に知恵や 長寿や 財産を授けると しています。その像容姿は 八臂happI(八本の腕)又は 二臂で、身色端厳で、琵琶を持つ場合があります。 日本では 財産の神として 弁財天と 書かれます  七福神の一に組み込まれ 福の神 厠の神となり、しばしば水辺に祀られます  蛇と結びつく事がありますhttps://ja.wikipedia.org/wiki/弁才天」     平成29年(2017年)11月21日

 

 三谷 日名    肢が竦んで動けん Unable to move because too frightened

昔 ある少年が 兄ちゃん(あーちゃん)と 呼んでいた 年の離れていない 叔父さんに 連れられ、本宮山に お参りして帰る時 道に迷いました。狐に 騙されて変な事をしている人達が あちこちにいました。2人は「怖い怖い」と 言いながら、ひょうきんな人達を 楽しく見ながら 帰り道を 探しながら 道を急ぎました。すると 隣村のお姉ちゃんが 狐に騙され 大きな木に 抱き着いて 愛を語っていたのです。着物は 開けHadake 太腿や 項Unajiや 胸がチラチラ見えています。兄ちゃんは 少年の眼を 手で塞い「見ちゃぁおえん」と 言いましたが そこから 動こうとしません。「兄ちゃん どねぇしたん」と 尋ねると、兄ちゃんは「狐の仕業じゃ   恐とうて 足が竦んでSukunde歩けんのじゃ」と 答えました。目を覆ってくれているお兄ちゃんの手は 震えていましたので、少年は お兄ちゃんが本当に怖がっていると思うと  恐ろしくて足が竦み、お兄ちゃんが 満足げに手 を引いて帰ろうとするまで  動けませんでした。「著者体験談」

平成23年(2011年)10月21日

 

 

狐に騙された怪力男 strongman DECEIVED BY  FOX

昔 聖なる山に  聖なる化生狐が 住んでいて 村人から 神として崇められていました。寺が 建ち繫栄すると 村人から振り向かれなくなった狐は  お寺に嫉妬し 新米の稚児を騙して堕落させ 寺の評判を落とそう としました。そこえ 力自慢の弁慶の様な大男が 稚児として 入山してきて、住職に 里に用を言いつけられ 使いに出されました。早速 狐は男の前に 絶世の美しい娘に化け、足を傷めて歩けないふりをしました。修業の進んでいない男は 弁才天に勝るような娘に 一瞬にして 魅了され「どうなさったのですか  歩けないなら負ぶって差し上げます」と言って 怖がる娘を 強引に背負おうとしました。しかし 娘は意外に重く 背負うのがやっとでした。それでも 背負って 坂を上って行くと 娘が お小水をしたくなったので 下ろしてくださいと 頼むので、ほっとして 下ろしてやりました。すると 誰かに見られないように 見張ってくださいと 手を引いて茂みに 誘うのです。娘が用を足すのを 見てはいけないと思い、手を離そうとしても  娘の握力は 男の力より勝り 足を傷めているとは 思えない力で 大男はズルズル引きずるのです。必死に 堪え 娘から目を背けると チョロチョロと 悩ましい音がしました。想像するだけで  若い男の性欲は 爆発したのです。男は あまりに  恥ずかしかったので 褌を汚したまま それを覚られまいと やっとの思いで 娘の手から逃れ 思わず 山道を掛け下りました。それ以来 男は娘の事 が頭から離れず 逃げ出した事を 後悔し、修業に身が入らず やけ酒を飲んでは 山道を彷徨う毎日を 過ごすようになりましたとさ。   平成29年(2017年)11月21日

 

狐に騙された美少年 Beautiful boy deceived by fox

 昔 貧乏な家庭から口減らしに送られた  細身で 色白の女性を 思わせる稚児が 栄え ていた山寺にやって来ました。住職に気に入られ可愛がられて かなり修業が進んでいました。すると その山に住み 山寺の繁栄を羨ましく思っていた 化生狐は 裕福な旦那に化けて 稚児の前に現れました。旦那が 山道で 足を引きずりながら歩いているのを 郷に用を言い付けられたその稚児が見つけ「どういたしました」と 尋ねると、旦那は 崩れ落ち「贅沢をした所為か 痛風で 苦しんでいます  お寺に 病気祓いをして頂こうと 思いここまで来ましたが、もう歩けません お坊様 病気払いのお経を 唱えてください」と 頼むのです。「和尚さんの所迄 背負ってあげましょう」と 言って背負おうとしましたが、どうした訳か 力だけは 人に敗けない位強い稚児でしたが とても重くビクともしません。仕方なく覚えたての薬師経を たどたどしく唱えると「あら不思議」忽ちに檀那の痛みは すっかり消え失せ スックと立ち上がり「有り難いお経を 唱えて頂き 本当にありがとうございました  お礼を したいのです が あいにく熨斗袋Nosi-bukuroの持ち合わせが ありません  私の家まで 来てください」と 言って手を引き 先導するのです。「所用があるので」と 言っても「ぜひぜひ」と 言って 手を離してくれません。仕方なく付いて行くと 豪邸がありました。真新しい青々とした畳が 敷いてあり、大勢の使用人が ボタン サクラ モミジ カシワ等のご馳走や 般若湯を 運んできました。貧しく 粗末な 食事や  精進料理腹八分しか食べた事が無かったので、その料理や お酒のおいしさに 夢中になって 鱈腹食べました。そして沢山のお金の詰まった熨斗袋 を 渡されました。始めて 褒められ 名誉欲をくすぐられ、食欲を始めて満たした稚児に  旦那は「ぜひお泊りください」と 言って優しく手を握って来るのです。その夜は 酷く疲れ 翌日の昼近まで寝てしました。寺での 起床は 空が薄明い内にしなければなりません。朝寝の喜びは  稚児にとって 初めての経験でした。翌日 言いつかっていた用を済まそうとすると、村で出会う人達は 皆が「なんか体が泥臭い  小便臭い息をする  馬糞臭い口臭だ」と 言うのですが 稚児は 五欲を満たされた事で 気にならず、もう頭の中は五欲が 充ち溢れんばかりで そんなことは 気になりませんでしたとさ。  平成29年(2017年)11月21日

 

和尚の狐退治 busting of fox by monk

栄えていた山寺が ありましたが、繁栄する山寺に 聖なる狐が 嫉妬しました。稚児達を堕落させ 山寺の評判を落とそうと考えた狐が、次々に 稚児達を 五欲の術で 騙し 堕落させたのです。和尚は 困り果て、一心不乱に 仏に向かい、毎日毎日食断ちし 読経しました。29日が 過ぎ 痩せ衰え死を覚悟した頃に 和尚の頭は 澄み渡り目前に光が放たれました。目を閉じ雑念を払い続けていると、光は瞼を通り抜け 黄金に輝く光りの中に えも知れない見目麗しい女性が現れ「私は弁才天です 私を祀りなさい あの化生狐から 必ずあなたをお救い致します」と 言うのです。和尚は 早速 弁天池を掘り 弁財天を祀り、頭の中を 弁財天で満たして 悪化生狐を 退治しに 住処を探しに行きました。これを知っ狐も「稚児達のおかげで 業は磨かれた 和尚なんぞに 負けるものか  和尚は美人に弱いと 聞いている」と 勇んで挑んできました。修業を積んだもの同士 なかなか勝負はつきませんでした。すると狐が 分限者檀那に 化けて「宝篋印塔の通路いっぱいの金銀財宝を 寺に寄付する」と言うのです。和尚が目を閉じ念ずると 宝物に囲まれた弁財天が 眼Manakoに現れました「 わしは弁財天様に守護されている 弁財天様は 財宝の神様じゃ  お前の宝物など 意地悪爺の瓦や瀬戸欠けみたいな物じゃ」と 言うと 狐が消えました。すると今度は 殿様が 現れ「寺に 備前国を捧げ この国の僧侶の最高位を与える」と 言うと、和尚は「何度言わせる  弁財天様は 智慧の神様じゃ  お前の邪心から わしを守護しておる」と 応じました。次に 天下一の料理人が 現れ ご馳走の山を運んできました。和尚は「未だ解らんのか わしは弁才天様の世話になっている  雪隠の神様じゃもの どんな旨い物も食えば 最後に雪隠に落す  あの断食の後の粥だけは  雪隠の具にしたくはなかったがのう」と 言いました。そして最後に 狐が持てる限りの術を使い世界一美しかろうと思う程の美人に化け 天女を従わせて現れました。さすがの和尚 もこれにはたじろぎましたが、目を閉じ瞑想すると迦陵頻伽Karyoubingaや 踊り手を伴い 弁財天の姿が 眼に映ってきました。和尚は「なんと美しい娘じゃ じゃが  わしは弁才天に様に惚れ抜いている   弁財天様は 美の神 芸能の神様じゃ  弁財天様に 比べれば  御前なんぞは 黄泉醜女Yomotu-Simeko以下じゃ」と 言うと 狐は姿を消しました。」「やれやれ 戦いは終わった」と 思い 寛ぐと 激 しい戦いの疲れがどっと出てまどろみました。すると夢の中にドンチャン ドンチャンと楽団の音がして 眠りを妨げました。和尚は「狐が  術を使って眠らせ 殺そうとしている」と 感じ「ひつこい奴じゃ  何度言わせる  わしは 弁財天様に守られている  弁財天様は長寿の神音楽の神様じゃ  お前に わしは殺せん  カッツ」と 喝を入れました。和尚が まどろんだ時 今度こそ成功すると思っていた 狐は  度肝を抜かれ 倒れ込み、心を惑わす業を 吹き飛ばされ 遂に和尚に ひれ伏しました。心を入れ替えた 狐を 寺の護り神の 眷属として寺に 住まわせました。「三谷野呂の百怪談」

平成29年(2017年)11月21日

 

狐の好物 Favorite food of fox

酒癖が 悪く 少しばかり女癖の悪い男が 芝刈りに 山に 出掛けると 可愛い娘が 道に迷って困っていました。見た事のない娘でしたので  一人旅をしているのだろうと 思い、親切にして付き合ってもらおうと 考えました。男が 娘に 困っている理由を 聞くと「娘は 狸Tanukiが 怖くて峠を 越せません。  まん悪く 騙さ)れ 道に迷わされているのです」と 答えたのです。見ると 普段と違う道が あったので、その道を 辿ってみると  険しい山に 続いていたので 元の処に 戻りました。この地の事を 知り尽くしている男は「狸の奴  とんだ 悪さをするものだ」と怒り、狸の住処(を 探し 穴の中で 寝ていた狸を 捕まえると「俺のせいじゃぁない」と 誤解を 解こうとしました。しかし 狸の言葉に かまわず 散々に 痛めつけ「娘を騙すんじゃぁ無い  またしたら 叩き殺すぞ」と 脅し 山から 追い出しました。男は 恋人気分で 娘の手を引き 娘の家の近くまで 送りました。娘は「父は 厳格な正義漢で 恩に厚い人です」と 重々しく語りました。厳格な父親と聞いて「邪な糞を 慎もう」と 初め抱いていた邪心を 捨て  別れようとしましたが「嫌いな狸を 退治してくれたお礼に 父は小父さんの嫌いな物を 退治しくれます」と 言って 手を離さず 男の嫌いな物を 尋ねました。

男は「嫌いな毒蛇が いなく成れば良い」と 答えました。娘は「世話は ありません   父は毒蛇捕りの名人です  ではさようなら」と 言って あっさりと 別れました。「おかしな娘だ」と思いましたが 翌朝を 楽しみにして寝ました。起きて見ると あろう事か 家の回りは蝮Mamusiだらけでした。「狐に 騙され ひょうたくられた(からかわれた)」と 気付いたのです。やっとの思いで 蝮を退治した頃、偶然 又 あの娘に出会いました。男は 仇討ちをしてやろうと 思い「この前は 蛇を退治してくれて 有難う  家にいた蛇共は 皆で共食いして1匹の蛇が 動けない程 腹を膨らませていたので  好物の酒を 飲ませて 酔った所を 斧Onoで 首を切り落とし退治しました。  所で 娘さんの嫌いな物 は何ですか」と 狐に尋ねました。娘に化けた狐は いけしゃあしゃあと「油揚げが 大嫌いです。ベトベトして 見た目も良くないし 肥り易いでしょう  それに 甘いお酒も 肥り易いので嫌いです  好物は 美容に良い果物や 野菜です」と 答えました。「それ であなたは美しい 細身なのですね  蛇退治のお礼に 好物を 届けましょう」と 約束し、はじめ男は「しめた  これで狐に 蛇を撒かれた仕返しができる 用心に 眉髭Mayugeに唾を擦ってNisitteおこう」と 思い 勇んで家 に帰りました。ありったけの材料で 油揚げを 沢山作り 稲荷に出かけました。そこには あの娘が待っていました。油揚げを 見ると「ギャァ ゾゾが立つぅ」と 女狐は汚い言葉を吐いて  狂わんばかりに苦しんだのです。娘は「騙して悪うございました  蛇の事は お詫びいたします」と 命乞いをしました。男は「様ねぇ  もそっとあだくり返って苦しめ」と 言って 愉快そうに 高笑いしながら帰りました。男が 満足して帰って行くと 女狐は 嬉しそうに「蛇を集められる位なら 狸退治は 朝飯前だと 気付かなかったのかね  お馬鹿さん」と 呟きながら 子供達や 仲間を呼び集め 油揚げを 美味しく食べ、甘いお酒で 酒盛りをしたそうです。無実の罪 で酷い目に合った狸は 子子孫孫 仇を取りたくて 男の畑を荒してやろうと 隙を狙っているそうです。今朝も 男の葡萄畑は 被害を受けました。「三谷野呂の百怪談」   平成23年(2011年)9月3日

 

甘い物が嫌い I'm not good at sweets

酒癖が悪く 意地悪な男が ある村に住んでいました。狐に酷く 騙されて 暫くは おとなしくしていましたが、三つ子の魂百までの例え通り、また 意地悪をし始めました。男の悪質な意地悪に困っていた皆が 集まり 奴の神さんから 奴の嫌いな物を 聞き出してそれを見せて 男を 懲らしめようと 相談しました。そこで 男の嫌いな物 を 奥さんに尋ねました。すると 男の奥さんは ポンと手を叩いて「甘い物が 嫌いじゃ」と 嬉しそうに 教えてくれたのです。そこで「酒を仰山貰ったので 酒の席を設け 心尽くしの肴を 用意した 。 飲みに来ねぇ。  奥さんも承知じゃ。」と 言って皆は 男を呼び出しました。男は「只酒(Tadazakeが 飲める。」と 思い 喜んで 出かけると、酒の肴Sake-no-Sakanaは 甘い物ばかりだったのです。これには 男も辟易Hekiekiしましたが、只酒とあれば 我慢して 勧められるままに 甘い物を 肴にして 酒を飲んだのです。当然ながら 甘い肴が 沢山余りました。皆は「遠慮無く 奥さんの土産Miyageに持って帰れば良ぇが」と 無理矢理 甘い物をごっそり持ち帰らせました。男は「あの狐より 質が悪い」と 嫌々 甘い物を 沢山持って家に帰ると、奥さんが 嬉しそうに待ち構えていました。甘いもの好きな奥さんの 推理がズバリと当っていたからです。男は 奥さんには 頭が上がらなかったので「かかあ天下」と 世間は言いますが、甘い物嫌いの檀那(さんの機嫌を損ねる事を恐れて いつも台所の隅に隠れて 甘い物を食べていたので 思う存分に食べられなかったのです。村の衆の心尽しのお土産ですから 檀那さんに 遠慮する必要は ありません。初めて 旦那さんの前で これ見よがしに じっくりと噛みしめて 甘い物を 堪能しました。男は嬉しそうに食べる奥さんを見ながら、むかつく胃の辺りを撫で 長い時間  込上げる黄水Kimizu(吐き気)に 堪えました。苦々過ぎた気分と 後に引いた 体の不調に 苦しむと「もう意地悪は 止めよう」と 決心したとさ。     平成23年(2011年)9月3日