吉備中央町の妖狐伝説 Traditions of fox with mysterious power in kibityuuoutyou


        化生狐

      キツネノカミソリ

 


京二と狐 狐の化け方 狐の教訓 嵩陽川の狐 狐の下働き 和尚さんと狐 狐に憑かれた娘 狐憑き落とし 飯ノ山の狐 回虫の生活循環 嘘つき狐 五欲の狐 肢が竦んで動けん 騙された怪力男 騙された美少年 和尚の狐退治 狐の好物 甘いものが怖い 安蔵と狐 狐の剃刀 尾原の狐火 狐の敵討ち 崖の上の狐と婆 犬のしつけの失敗 山根の狐の嫁入り 狐の嫁入り 鍋谷の狐 狐と河原文太郎 敗軍の霊 逢川の狐 蝋燭を盗る 貴布祢様の狐 文太郎の供養祠 岩崎の川神 大和神社の狐 坊主にする狐 二本枝の剃刀狐 狐と火の玉 江戸時代の葬式 幽霊の正体 正体は枯尾花 伏見へ行ったお爺さん 大国主命と少彦名命の我慢比べ お紺の純愛 柳井田の狐の嫁入り 狐の厠 文吾と狐 虎に化けた狐 旅人と虎と狐 人間食いたい 狐の恩返し 藤折の狐 おしゃま狐 入道狐 次第高 見越入道

平成29年(2017年)3月31日に【岡山「へその町」の民話-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備人出版】が発行されました。P207~P244に狐に関する民話が載せられています。  平成31年2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。p42~P50に狐に関する民話が、P50に「峠谷の狐」、p57に「小豆洗い」と言う狐の話が載っています。

上田東 京二と狐 Fox turns itself into a Kyouji

案田の鉄砲撃ちの京二は よく狐(を捕ったので、狐族に 最も危険な人間として 目の敵に されていました。その京二が 猟師仲間と 本宮山に 狐狩りに行く相談をしている所を 狐に 見られてしまいました。狐達は 寄り合って 何とか 京二が 狐狩りに出られないようにさせようと 相談しました。そこで 1番化け上手な狐が 前祝に 酒を飲んでいる京二の所に 可愛らしい猟師仲間の妹に化けて、酒と 肴Sakanaを届け 酌をして 盛り上げました。普段なら 京二の事ですから、狐が どんなに上手に人間に 化けても 臭いの違いや 歩き方や 話し方の微妙な差で 見破るのですが、この日は 明日の猟果を 楽しみにしていて、既に 深酒気味だった事と 娘のサービスに 有頂天になり 見破り損なったのです。その頃 他の猟師仲間は 化気神社Kegi-jinjyaに 猟果祈願に 詣でていました。その道すがら 別の狐が 京二に化けかけている所を 見付けました。猟師達は「狐の奴 京二に化けて 騙しに来るつもりじゃ」と 確信しました。京二は 娘に優しく見送られ 何も知らず 良い気分で 皆の後を追い掛けました。追い付くと 猟師達は 酔いたん坊の京二を「ソレ」と ばかりに押さえ付け、暴れながら 訳を尋ねる京二に 構わず 縛り上げて、しきりに 尻を持ち上げるのです。京二は「よせ きちんとウンコの後 尻ぃ 拭いたぞ」と 言って怒るのですが これも 無視され、他の猟師が 口を開けさせ 歯を見ました。

「何じゃよぅ  わしぅ狐じゃとでも 思っているのかぁ」と 京二が 言うと、猟師仲間は「語るに落ちた  やっぱり狐が化けた京二じゃ  おどりゃぁおどれぇ ようまぁ京二に化けて わし達ぅ 騙そうとした  この前 牛のお小用Okoyo(おしっこ)の酒ぅ呑ませたんは お前じゃろう  濁り水でも 飲め  この前 馬の糞の団子ぅ食わせたんもお前じゃろう  泥団子でも食え  この前 肥溜のお風呂に 入れたんも 貴様か  泥水で 顔でも洗え」と 言って 散々に 虐めましたが 化けの皮を 剥がさないのです。「これ以上 邪な糞Jya-na-kuso/Ji-nza-kus(無茶苦茶・悪さ)をされたら死ぬる  わしぁ 狐じゃあない  わしの犬ぅ連れて来てくれ」と 言うと「可笑しいOkasii  本物の京二かも知れない」 と 疑い出す者が居て、京二の愛犬を連れTれ来て 匂いを嗅がせました。犬は縛られた京二の側で、悲しそうに鳴き 優しく縄目を 舐め(始めました。仲間達は「本物の京二だ」と 解り、乱暴した事を 詫びながら 縄を解いてやりました。京二は「狐さん  傍で見ている じゃろう  わしぁ 狐狩りゅう止める  狐さん 等も 惨ぇ悪さを悪さをぁ 止めておくれぇ  嫌と言うんなら サッチポロを あちこちに撒くが それでも良ぇか」と 叫ぶと、柳の陰から 京二を 細くしたような 者が「解った  わし 等も 悪でぇ悪戯ぁ止める   同じ手はもう使えまい   だから約束通り 狐猟師に 戻らないでくれ  これ位の悪さなら 許してくれ」と おならを しながら 本宮山に 帰っていきました。京二が 狐猟師を止めると 狐はそれからは 不衛生な騙し方をしなくなり、手拭に化け 拾おうとすると スルリと 逃げる等  笑って済ませるような 悪戯をして 人間を楽しませるようになったそうです。 京二も お百姓に 精を出し、稲の豊作を願い 稲荷神社に 油揚を奉納し、狐を 崇めたそうな。「化気神社に参詣していた人より口伝」を 基にした 物語 本宮山:神瀬 上田東 北五34度54分13秒東経133度50分44秒    案田化気神社:北緯34度54分19秒東経133度49分22秒 主祭神は 食物の神 伊奢沙別命です。 案田稲荷神社:食物の神 稲荷神を 祀ります 北緯34度54分20秒東経133度49分2秒    サッチポロ:狐の大好物である 干しイクラの事ですが、食べようとする と歯に こびり付くので 狐は気持ち悪がり、こびり付いたサッチポロを 取る事に専念し 化けていても 思わず正体を現すと 言われます。  釣狐伝説猟師に 一族をみな釣り取られた老狐が、猟師の伯父の白蔵主に 化けて 猟師の所へやって来ました。  白蔵主は 玉藻の前の話をして 恐ろしい狐の祟りを説き 猟師に 狐釣りを 止めさせました。しかし その帰り路に 猟師が 捨てた狐釣りの罠の鼠の油揚げを 見つけ 誘惑に負け 化けの皮を剥がしました。それに 気付いた猟師は 本性を現した狐を 罠で捕らえました。「http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/contents/learn/edc12/enmoku/tsurigitsune.html」  

平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。p44に「父に化ける」と言う物語が載っています。 

平成23年(2011年)9月3日

 

 

狐の化け方 TECHNIQUE HOW FOX TRANSFORM INTO SOMETHING ELSE

民話に登場する狐の化け方には 色々の方法が有ります。最も多い方法は「川藻水藻等の藻や 黒髪を 頭に載せる」方法で 髪の毛の長い女性に 化けます。2番目に 多い方法は「木の葉や 馬沓Um-agutuwaを 頭に載せて」化けます。多くは 髪の毛の短い人に 化けます。「何も持たず何もせず化ける」事も ありますが  特定の動作 例えば「川で顔を洗う 水面を鏡にする 宙返りをする 玉や巻物を口にくわえる」等して 化けます。「ドクロを 頭に載せる」化け方はその人の生前の姿に 化けます。「紙を巻きつける」場合は 紙を衣装にし、多くは 女性に化けます。「木の葉を 頭に乗せ 宙返りする」方法は かなりの修業が 必要です。http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-1181.html」 

平成31年(2019年)3月31日に【岡山「へその町」の民話 追補版-岡山県吉備中央町の採訪記録 立石憲利 吉備中央町図書館 吉備中央町教育委員会】が発行されました。P49~P50に「狐の「化け方」の民話が載っています。

  平成23年(2011年)9月3日

 

尾原 狐の教訓 Fox learned a lesson

尾原の男が 戦争に 行き、さんざん弾丸を 受けましたが、無事に 帰ってきました。しかし 戦争経験のストレスから 抜け出す事ができず、苦悩を お酒で 誤魔化していました。そんな訳で 本来は 酒好きではなかったのですが、世間の人に 大変な酒好きだと 思われていたのです。この日も 酒屋に入り浸りしていました。すると 物凄い別嬪Beppinさんが 柳腰で 斜向Hazumukaiに 座って、親切にも 酌をしてくれました。玉の鈴のような悩ましげな声で「飲ましてもらっていいですか」と 言うので、男は 鼻の下を長くして 奢ってやる事にしました。女は 矢鱈と油揚げを 肴Sakanaに注文し、神様に 捧げる様な 美味しい酒ばかり注文して 飲んだのです。男は 白粉Osiroiの匂いを 嗅ぐと 気分が高まると言う 少し変態的な傾向があったので 厠Kawayaへ行く振りをして 女の首筋の匂いを嗅ぎました。すると 性癖のたまものか、白粉の臭いに混じって  普通の人には わからない程の かすかにに 狐の臭いがするのです。「八神稲荷神社Yakan-Inari-jinjyaの使いの狐は 酒好き 油揚げ好きじゃ  不作続きで 誰も油揚も お神酒も 奉納しなくなった  偶にはTamani-ha酒が飲みたくなって  若付いたなりをして お人好しのわしを 騙して 只酒を 飲もうとしておる  その手に乗るか」と 思いました。そのまま 厠に行って 誰にもに気付かれないよう 裏木戸から抜け出し「どうせ 狐が葉っぱか 小石か 皿かで 贋金Niseganeでも作って 会計するじゃろう」と 思い、狐と酒屋のやり取りを 覗き見しました。連れの男が 見えなくなったので 酒屋の主が、女に 飲み代を 請求しています。女狐は 男を信じていたので お金を用意しておらず、木の葉も 小石も持ち合わせていず、お皿には 好物の油揚げが 乗っていました。女は 木の葉でも拾って お金を作ろうと 思い「厠に行たい」と 申し出ましたが、先の男の事もあるので 酒屋の主は 許してくれませんでした。酒屋は女狐の手を引いて、お役人に引き渡そうとしました。女は 狐の姿に戻り 酒屋の手を 咬もうとしましたが、酒屋は 元お侍で 武道の達人でしたので あっさりと 取り押さえられてしまいました。「何でもするから 許してください」と泣いて 頼むと、酒屋の親父Oyajiは、お尻ぺンペンや 鼻ピンや 頬ぺツネツネをし からかった後、辛い辛い 水仕事や 掃除をさせる 等 散々こき使い 許してやりました。ある日 その男が 八神稲荷神社の本殿 に 五穀豊穣を 祈願しにお参りしようとした時に 子狐に 合いました。狐の子は 頬白で 女狐の子供と 解ったので、男はあの女狐に謝ろうと 思い声を掛けました。子狐は 遊んでもらえると思い、喜んで「お母さんに聞いて来る」と 言って母親の所に行きました。

物陰から覗うと 子狐が「首に怪我をした 小父さんが夘堂坂を 登って 麓から来たよ  遊んでもらっても 良いかのう」と 母親に尋ねました。すると母狐は「駄目  駄目  あの人は 狐を 馬に乗せたような 嘘付よ  狐を騙すけぇ 近付いちゃぁおえん  あの男の顏を 思うばぁで きゃぁ糞悪ぃ」と 子狐に 教えていました。それを聞いて男は「稲荷に祟られては どぎゃぁにもこぎゃぁもならん」と 思い、次の日 出直し 詫び状を添え 沢山の油揚げ 小豆飯と お神酒を 稲荷神社に 奉納しました。するとその年から男の田畑は 豊作となり、一匹と一人は 下心なく程々の酒飲み友達になりました。お酒召さぬ神はない。「尾原屋八神稲荷神社で正装していた村人より口伝」    下尾原の八神稲荷神社:北緯34度54分56秒東経133度45分35秒 尾原の狐:尾原の狐は 尻尾を 掴と化けの皮が 剥がれるとされ、狐に 咬まれるとそこが 腐るとされます 狐の子は頬白狐の子は面白Turasiro子が 親に似る  子狐の毛色は 母の毛色に似ている ウドフザコ夘堂坂卯堂坂:尾原480・482-492番地

  平成23年(2011年)9月3日

 

今昔物語集100「高陽川の狐、女と変じて馬の尻に乗りし話」

仁和寺の東に 高陽川Kaya-gawaという川があります。夕暮れになると 若娘が立って「その馬の尻に 乗せてよ わたしも京の方に 行きたいの」と 頼むので馬上の人が 娘を乗せてやると 五百メートルばかりで コンコンと 鳴きながら 逃げ去りました。こうした悪戯が 幾度も続いたので 御所の滝口の武士達の間で も評判になりました。一人の若い武士が「おれだったら 小娘を 搦め捕れる」と言うと 仲間の武士達が口々に「お前には 無理だ」と 言いました。翌日の夜に 若武者は 独り馬に乗り 高陽川に行き 悪戯娘を 馬の尻に乗せてやり 用意してきた縄で 娘の腰を縛り 馬の鞍に結びつけました。「ひどい」と 娘が言うと「今宵は おまえを 抱いて寝る  逃げられて 堪るか」と 答え暗くなった道を 戻って行くと、火を灯した車を 連ねた行列が 大声で 先払いをしながらやって来たので「誰か高貴な方の行列だろう」と 思って それを 避け遠回りして 土御門Tuti-mikadoまで行きました。待ち受けさせていた その侍の従者 十人ばかりに 手伝わせ娘の縄を解いて 馬から引き下ろし、腕を掴んで 門から入り 滝口の詰所まで 連れて行きました。詰所では 同僚たちが 待っていて、小娘が「もう許して 怖い人が大勢」と 泣いているのを 許さず 連れ込むと、同僚達が 取り囲み弓を 一斉に構えました。明かりの中で 掴んだ腕を放すと 娘は狐になって 鳴きながら逃げだしました。すると居並んでいる筈の者達は かき消え、火も消えて 真っ暗闇になりました。武士は 慌てて従者を 呼んだのだのですが 部下も 馬もいず、闇をすかして見ると 来た事もない死者を 風葬する鳥辺野清水寺でした。狐に 騙されたと解り 肝も心も震えあがらせて 夜半に家に 帰り着いたのですが、次の日は 死んだようになって寝込んでしまいました。三日目の夕方 やつれ果てて 若い武士が滝口の詰所に 姿を見せると「あの晩は 狐を捕らえたのか」と 同僚が言うので「病気になって行けなかった 今夜こそ行く」と 益もない意地を張り 屈強な部下を連れ 再び高陽川迄 行きまさした。川の畔に この前と違う娘が 立っていて「馬の後ろに乗せて」と 言うので 乗せてやり、縄で 娘をきつく縛り 一条大路を 部下に 厳重に見張らせながら 暗くなった道を帰ってゆきました。土御門で馬を 下り、泣く小娘の髪を掴んで 滝口の詰所の同僚の前まで  引きずりだしました。暫くの間 ひどく責めつけると ついに狐の正体を 現したので、たいまつの火で 毛もなくなる程に 焼き、矢で 何度も射た後「二度と人を 化かすな」と 言って放してやりました。その後 十日程たって若い武士が 馬に乗って高陽川に行ってみると 前の小娘が 重病人のような様子で 立っていました。「馬のうしろに 乗らないか」と 声をかけると、「乗りたいけど、乗らない。焼かれるのがつらいの。」と 答えて消え失せました。「今昔物語集100「高陽川の狐、女と変じて馬の尻に乗りし語」 | やけい (ameblo.jp)」 「巻二十七第四十一話 少女に化けた狐を後ろに乗せて走った話 | 今昔物語集 現代語訳 (hon-yak.net)」   平成23年(2011年)9月3日